昔、恩師(発達心理学の大御所)に「君はどうやって歩き出したか覚えているか?それに、歩く動作を言葉で説明できるか?」と聞かれました。いやそんなこと覚えていないし、動作をいちいち「まず、踏み出すのと逆の足に体重をを乗せて、ももと前側の筋肉に力を入れて・・・」なんて言わなくても普通に歩けますし(笑)
 なぜそんなことを聞くんだろうと思ったら、「乳幼児の時代に覚えた・身につけたことは頭の中では忘れてしまうもの。忘れるくらいに身につけるのが乳幼児の学びであり教育なんだ」とおっしゃいました。40年以上たった今でも忘れられない言葉です。
 なるほどそういうものかもしれません。子どもたちの遊びを見ても、「遊びたいから遊んでいるんだろう」と思えますが、たとえば鬼ごっこは「走る技術」「身のこなしを知る」「捕まえる・捕まらない工夫をする」「仲間と連携する」などなど、砂場では「見立て(想像・創造)」「完成を見通して作る」「乾いた砂と湿った砂の性質の違いを知り工夫する」「友だちと協調する・主張したり他者の主張を理解する」などなど、と、いろいろな学びをしています。
子どもはそんなねらいなど意識せず、成長すれば忘れてしまうかもしれません。でも、無意識に「学んで」いるのです。保育者はそのような学びを意識して見守ったり関わったりしています。だから、忘れるくらいに熱中してほしいんです。
とはいえ町中で「あ、先生だ!」と声をかけられるのもとても幸せなんですけれどね!