子どもって、現実世界とファンタジーの世界を行ったり来たりしていますよね。私は小さいころ、寝る前にかならず「屋根の上をお化けや妖怪がぐるぐる飛んでいる」という妄想がありました。妄想したかったのではなく、そういうイメージがどこかからやってくるんです。とても怖くて泣きながら眠ってしまい、朝起きたときも嫌な気持ちが続いていました。友だちと遊んでいても「この子は本当は妖怪なんじゃないか」と考えてしまったり。子どもはファンタジー(私のは怖いファンタジーでしたが)と現実の境目が曖昧で、ファンタジーの世界で起こっていることを現実だと思ってしまうことも多いのです。(大人でもたまにあります。悪役を演じた役者さんを「悪い人だ」と思ってしまうとか)
また、現実世界で経験したことも、1回ファンタジー世界を通って形が変わっていくこともあります。たとえば友だちが誰かに叩かれたのを見て、ファンタジーを通して「自分が叩かれた」と思ってしまうとか、「これをされたら嫌だな」という思いが実際に「やられた」と思ってしまうとか。これは悪いことではなく、乳幼児期の脳の発達段階で「想像力」や「創造性」の芽生えであると言われています。私たち保育者は子どもの発言が現実のものなのかファンタジーなのかを見極め、そしてファンタジーを大事にしながら、子どもの気持ちが楽しい方向に導くことが大事だと思っています。お子さんはどんなファンタジーをお持ちでしょう?
だいぶ前に、お茶の水女子大学の大学院生の研究をお手伝いしたことがありました。研究テーマは「テレビ番組の暴力的シーンは子どもの行動に影響するか」というもの。
結果は「影響するかどうかは、子どもがテレビを見ているときに親がそばにいるかどうかによる」でした。親がそばで一緒にテレビを観る家庭では、子どもは暴力的にならず、一緒に観ない家庭の子供は暴力的になる傾向があるということでした。
つまり、子どもはテレビ番組を観ているときはファンタジーの世界に没入しますが、そこに親の存在があると「今観ている(ファンタジーの)世界は、ママやパパがいる現実とは別のものだ」と感じるということのようです。別に親が「これはアニメの世界だから」などと解説する必要はなく、ただそばにいるだけでよいという結果でした。