昔、友人のお嬢さん(幼稚園児)が私に「私、魚の名前を50個言えるよ」と言ってきました。彼女は小学校受験のための塾に行っていて、その授業の課題で覚えたのだそうです。「すごいねえ。じゃあ、その中で一番好きなのは何?」と聞くと彼女は「そんなの考えろって言われてないし、なんの役に立つの?」と答えました。

 子どもの集中力と記憶力ってすごいなあと思いましたが、それといっしょに「学び」とはなにかについて考えることとなりました。

 もちろん「学び」の中には、しっかり暗記するべきもの、現実の生活の中で役立つものがたくさんあるでしょう。学校の勉強でも、九九はのちのちまで役に立ちますね。50個の魚の名前も少なくとも受験に役立ちそうです。ですが、三角関数は普通の生活の中では役に立たないと思いますよね。(実際に役立てている人もいますが少数です)

 でも、一見役に立たないと思う「学び」も、その人の人生に大いに役立っています。三角関数は生活の中で役立てる機会はまずないと思いますが、実は「論理的に考える」「推理力を磨く」ことに役立っていますし、国語の授業で小説などを読むことは視点の幅を広げたり共感性を高めたりします。「好きな魚」も、「なんでこの魚が好きなんだろう?形かな?色かな?味かな?」と考えることは、とても豊かな思考に発展する可能性があります。

 暗記やテクニックを学ぶことも必要ですが、インターネットやAIの発達によって「考えを巡らす」学びへとシフトし始めています。。例えば掛け算や割り算は電卓で一発ですよね。(もちろん筆算や暗算は別の意味での重要性は失われないませんが)

一見役に立たないことを学んだり、学んだことをもとにいろいろと考えたり想像の翼を広げたりすることが、これからの時代に生きる人としての豊かな成長の大切なものになっていくのだと思っています。

(追記)

 「魚の名前」のエピソードをご覧になって「小学校受験とか小学校の勉強って暗記ばかりなのかな?」と感じられた方もいらっしゃるかもしれませんが、実はそんな事はありません。このエピソードは30年近く前の、しかもある塾の授業のものです。現在の小学校入試は、「考える」「工夫する」「想像・創造する」問題が主流で、受験塾もそのような内容になっているところがほとんどです。小学校の学習指導要領の改訂により、そのような傾向になっています。また、昔からそういう傾向の入試をする小学校もあり、ある小学校などは受験科目が「お絵描き」しかないというところもあります。絵の中の登場人物や物、その配置などから子どもの特性を見ようということだと思います。

 ある意味、小学校(中学校も)の教育が幼児教育に近づいたのだと、私は思っています。