昔、田園地帯にある幼稚園の園長先生に「そちらはいいですね、遠足の候補地がたくさんあるでしょう?うちの園からは自然豊かな場所は数えるほどしかなくて、遠足の行き先を探すのに苦労するんです」と言ったら「それがね、自然豊かなところに遠足に行って子どもたちが喜ぶかというとそんなことはなくて『なんだ、うちの周りと同じじゃん』って言われちゃうんだよ。まるで感動してもらえないんだ」と返されました。そう、自然が豊かなところの子どもたちは、自然に対してあまり感動してくれないようです。逆に自然が少ないところの子どもたちはちょっとでも自然があるととても喜んでくれるなあと思いました。
幼稚園では、「モノ」が豊富になりすぎないように配慮しています。もちろん子どもの主体性や挑戦心などの呼び水になる「モノ」は別ですが、不用意に「モノ」を豊富にしすぎると、子どもは「モノ」に遊ばれてしまうと思っています。そういう環境だと子どもは工夫したり想像力を巡らせたりすることがなくなってしまうのです。昔、幼稚園での折り紙遊びは、普段は広告紙を正方形に切ったものを使っていました。(年長くらいになると広告紙を正方形に切る「ワザ」を習得する子も出てきます) そして、特別な日に本物の折り紙を渡すと、子どもたちはとても喜んで大事に使います。今はそこまで制限していませんが。
幼児教育は「環境を通して行う」と言われます。勉強ではなく、身近にある環境に影響されたり、環境に働きかけることによって学ぶということです。そして豊かな環境とは、子どもが欲しいものがなんでもある、ということではなく、子どもが工夫したり努力したりして自分の欲しいものを作り出していける環境なのだと思います。
今はいろいろなものが何でも手に入る時代です。でも、最初から努力も工夫もせずに手に入れたものや環境は子供の心にあまり響きません。苦労したものや環境はお子さんの豊かな成長につながります。