子どもは2つの世界に生きています。ひとつは現実の世界、もうひとつは「ファンタジーの世界」。絵本やテレビの世界です。もちろん大人もファンタジーの世界で遊ぶこともありますが、現実とは違う、境界があることはわかっています。でも子どもの時期はその境界があいまいで、ファンタジーの世界での出来事や行動を現実のものと感じることがよくあります。これは子どもの発達にとってとても大切なことで、創造性、思いやり、正義、冒険心などなど、ファンタジーの世界から得られるものは思った以上にたくさんあります。
ファンタジーの世界がとても身近なので、たとえばテレビの中の登場人物がいじめられるとまるで自分がいじめられているように感じることもあります。ファンタジーは現実の中でも起きるもので、友だちがぶたれたのを見ると自分がぶたれたように思うことも。そしてそれを身近な大人に伝えます。これは「嘘」ではありません。感性の豊かさがそうさせているのです。私たち大人はそれを嘘と決めつけで責めないこと、逆に信じて同調する前に事実を確かめたりすることが必要ですね。それが実は子どもの心を傷つけないことにつながるのだと思っています。