ずっと以前、アメリカの大学教授と共同で「がんばれ!」について研究したことがありました。その教授はアメリカ人男性と結婚した日本人で、「アメリカには“がんばれ!”と同じ意味の言葉がない。あえて言えば “Do your best !” だけれど、ニュアンスが違う。日本人の精神とか子育ての秘訣なのでは?」という興味から始まりました。そのときはこの言葉かけが子どもの気持ちに良い影響を与えていると考えて論文にしたのですが、現在の私はちょっと疑問に思えています。

よく「鬱病の人に“がんばれ”と声をかけてはいけない」と言われます。鬱のときは「がんばりたくてもがんばれない」「がんばる気力が起きない」状態なので、「がんばれ」と言われると追い詰められてしまうのです。でも鬱の状態が軽い場合は「目標を定めて、それに向かって頑張る」ことが必要な場合もあります。遠い目標ではなく、できるだけ近い目標を設定することがコツのようです。

子育てでも同じことが言えるのではないでしょうか。本当に落ち込んでいるなら「がんばれ」よりも、休ませてあげたり楽しいことを経験させてあげるのが良いでしょう。そして「少し壁にぶつかっている」「ちょっと落ち込んでいる」なら、できそうな目標を設定してあげて、それに向かってやれることをアドバイスすることで、元気になるきっかけを作ってあげられるのではないでしょうか。つまりは “Do your best !” という言葉は理にかなっているということですね。

もちろん、運動会などで「がんばれ!」というのは良い励ましですし、がんばったのなら「がんばったね!」と認めてあげてくださいね。